「ラーマーヤナ」では、ラーヴァナはラーマ王子の宿敵として登場します。
ラーヴァナは、10の頭と20の腕を持つ恐ろしい姿をした魔王で、自在に姿を変えることができました。しかし、これはラーヴァナが本来の姿ではありません。彼は、もともとヴィシュヌ神の門番であったジャヤの生まれ変わりでした。
ジャヤは、兄弟のヴィジャヤと共に、聖仙たちを門前払いしたため、アスラとして生まれ変わる呪いをかけられました。呪いを解く方法は二つ。人間として7回生まれ変わるか、ヴィシュヌに倒される運命の邪悪なアスラとして3回生まれ変わるか。彼らは後者を選び、ヴィシュヌに倒されることで早く呪いを解こうとしたのです。
こうして、ジャヤはラーヴァナとして、ヴィジャヤはラーヴァナの弟クンバカルナとして生まれ変わりました。ラーヴァナの父は聖仙ヴィシュラヴァス、母はアスラの娘カイカシーでした。ヴィシュラヴァスには、別の妻との間にクーペラという息子がいました。クーペラは富と繁栄を司り、ランカー島(現在のスリランカ)を支配していました。
ラーヴァナは、強大な力を手に入れるため、ブラフマー神に願い出て、神々の武器では殺されない体になりました。しかし、不死身になったわけではありません。彼は、神々との戦いで多くの傷を負った姿で描かれることが多く、人間に殺される可能性は残されていました。
ラーヴァナは異母兄クーペラを妬み、ランカー島から追い出して、クーペラの空飛ぶ魔法の戦車を奪いました。そして、マンドーダリーという美しい女性と結婚しました。マンドーダリーは、前世ではシヴァ神を誘惑しようとしたアプサラス(水の精霊)マドゥラーでした。シヴァ神の妻パールヴァティーの怒りを買い、カエルに姿を変えられてしまったマドゥラーは、12年間カエルの姿で過ごした後、人間に生まれ変わるよう告げられました。
12年後、マドゥラーはマンドーダリーという人間の姿で生まれ変わり、ラーヴァナと結婚しました。マンドーダリーは、ラーヴァナに邪悪な行いを止めるよう忠告しましたが、ラーヴァナは聞き入れませんでした。
ラーヴァナは、ヴェーダヴァティーという高潔な女性を誘惑しようとしましたが、拒絶されます。ラーヴァナがしつこく迫ると、ヴェーダヴァティーは呪いの言葉を吐き、自ら火に身を投げて命を絶ちました。ヴェーダヴァティーは、後にシーターとして生まれ変わり、ラーマ王子と結婚します。そして、ラーヴァナに復讐を果たすのです。